人間には、自然に備わった解毒の仕組みがありますので、そうそう化学物質がからだに溜まることはありません。特に日本の水道は安全ですので、からだに影響が出るほど汚染物質が蓄積するとなると、別の原因が考えられます。


■有害ミネラルの排出

人体を構成する元素のうち、炭素・水素・酸素・窒素を除く元素を総称して無機質(ミネラル)といいます。ミネラルのなかには、人体に必要なものもあ れば不必要なものもあります。厚生省(現・厚労省)では1999年10月に「食事摂取基準」として、人体に必要な必須ミネラルのうちの13種類(カルシウ ム、鉄、ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウム、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、亜鉛、クロム、モリブデン)について、許容上限摂取量を決定しまし た。

また、人体に有害なミネラル(特に重金属類)も存在します。水銀、ヒ素、鉛、カドミウム、アルミニウムなどがそれにあたります。日本でも、水銀やカドミウムが本人の知らぬ間に体内に蓄積し、おそろしい病気を引き起こして社会問題になったことが、何度もありました。

・水銀中毒
俗にいう水俣病(メチル水銀中毒症)で、ハンター・ラッセル症候群ともいいます。1950年代から60年代にかけて、熊本県水俣湾沿岸に多発した水俣病の 原因は、新日本窒素肥料(現在のチッソ)水俣工場が、未処理のまま多量に流した排水に含まれたメチル水銀でした。1960年、新潟県阿賀野川流域でも患者 が発生しましたが、これは阿賀野川上流の昭和電工鹿瀬工場の廃液に含まれるメチル水銀が原因です。

メチル水銀中毒症にかかると、四肢・全身がしびれ、言語障害を引き起こし、視野狭窄や難聴、自律神経障害や精神障害が発現して死亡します。また胎児への影響は大きく、脳性麻痺の子どもの発生率が上昇します。

水銀は体内に隠れますので、髪の毛や血液、尿などを調べても、水銀中毒かどうかはわかりません。水銀中毒でも検査結果は正常値が出る確率が90%です。市販の毛髪検査キットなどでは、水銀の蓄積は検出できないといっていいでしょう。

・カドミウム中毒
俗にいうイタイイタイ病です。1910年代、富山県の神通川流域に発生した奇病で、最初はちょっとした痛みだったのが、年追うごとに全身に広がり、わずか な力で簡単に骨折するようになり、最期は「イタイイタイ」と悲鳴をあげながら死んでいく病です。原因は、神通川上流の岐阜県神岡町にある三井金属鉱業神岡 事業所(神岡鉱山)が、カドミウムを含む排水をそのまま神通川に流していたからで、慢性カドミウム中毒症がイタイイタイ病の正体です。

イ病の発生当時は原因もわからず、適切な対症療法がなかったのですが、骨軟化症に類似する病気だと判明した時点で、地元の萩野昇医師などによってビ タミンDの大量投与(骨軟化症に対する治療法)がおこなわれ、治癒への道が開けました。イタイイタイ病は日本の公害病第1号です。

2006年、中国・無錫市の松下電器工場(無錫松下電池有限公司)の従業員にカドミウム中毒が発生しました。含有量が国家基準をオーバーし、死亡者が出たのと報道もあります。

・ヒ素中毒
ヒ素中毒として社会を騒がせた事件には、「森永ヒ素ミルク中毒事件」「ヒ素カレー事件」などがあります。

ヒ素はもともと自然界に存在し、毒性の強い物質です。バングラデシュでは、ユニセフ支援のもと、政府が掘った井戸の飲料水がヒ素に汚染され、大問題になっています。また環境汚染・食品汚染・作業現場などのため、ヒ素中毒がおこることも多くあるのです。

しかし毛髪検査・尿検査ともにヒ素の測定はむずかしいといえます。無機ヒ素による急性中毒の症状は、おう吐、下痢、痙れん、末梢神経障害など。慢性中毒になると、皮膚や粘膜の障害、黒皮症、血管障害などがみられ、癌の死亡率が高まります。

2004年、英国の食品規格庁が、無機ヒ素の含有量が高いことが判明したため、日本製のヒジキを食べないよう国民に勧告しました。それをうけて、日本の厚生労働省は、通常の量であれば問題はないというQ&Aを発表しました。

・鉛中毒
ローマ時代には、酸っぱいワインに酢酸鉛を加えると甘くなるということで愛好者が増え、鉛中毒が広がりました。日本も、江戸時代から明治時代にかけておしろいの粉が鉛だったため、鉛中毒が多かったとされています。

アメリカで問題になったのは、白色塗料として使われていた鉛による中毒です。廃屋で遊んでいた子供たちが、壁の白いペンキを食べると甘いということ を発見して口に運んだ結果、中毒になってしまったのです。日本でもまだまだ鉛を含んだ塗料が塗られている場所は多いので、気をつけるに越したことはありま せん。

ところで、日本では水道管として鉛管が使われているせいで、水道水は鉛に汚染されている…という人もいますが、水道水に溶け出した鉛への対策として は、「朝一番の水を捨て、それでも心配なら浄水器をつける」程度で充分。最近工事された水道ならば、それすらも必要ありません。


■急性中毒の治療

日本中毒学会では、急性アルコール中毒や麻薬中毒を含めた急性中毒の治療に、いくつかの解毒療法を標準治療として推奨しています。

・強制利尿
・血液浄化法
・消化管除染(胃洗浄)
・消化管除染(活性炭)
・消化管除染(緩下剤)
・消化管除染(腸洗浄)

これらは医療的なデトックスといえますが、体温管理や呼吸管理などに慎重に気を配らなくてはいけないため、決して医師の判断なく安易におこなわないでください。

自分が中毒かどうかも、市販の簡単なキットで調べて安心したりせずに、疑いのある場合は医療機関にかかることをお薦めいたします。



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